相似形

そのひとは女の子。数少ない飲み友達。ふつうの友達でもあるんだけど。
飲むが好きで、いっしょに飲んでいるのが楽しいひと、楽なひと。
そのひとはほとんどいつも、ビールやウーロンハイを飲んでいる。
オレは甘いフルーツ系、モスコミュール、ココモコーラ。それに。
氷のなかに発光装置が入っている、間の抜けたカクテルなんか。


だから、かなりの確率で、相手の頼んだものが目の前に置かれる。
それを見て、ふたりはわらう。けらけら。苦笑いではなく、単純にわらう。
近況の報告をして、共通の友達のはなしをして、学生時代を思い出す。


たいてい仕事のあとで、どっちも疲れてたりするから。
そのうち、オレが眠いと言って、そのひとも眠いと言って、またわらう。
どれだけ眠くても、すぐには帰らない。終電のひとつ手前までくりかえし、
むにゃむにゃと喋って、手を振って別れる。じゃあ。またね。


同じ場所、たとえばオレのうちに、一緒に帰ることもできるんだろう。
でもそれをしない。そのひとに恋人がいるからかもしれないし、
関係ないかもしれない。残念だなあ、と思う反面、それでいいや、とも思う。
そして帰りの電車、ひとりでわらう。そのひとも、ひとりでわらってる。きっと。